ストレスという用語は日常的に使われているが、その構造は複雑なため医療現場で働く看護師であっても、ストレスの本質を理解している人は多くない。実はストレスは医学用語ではなく、元々は物理学用語だ。1930年代にカナダの学者が名付けたもので、柔らかい物体に力を加えるとへこむ状態がストレスと表現された。この物体のへこむ状態が次第に人間に置き換えられるようになり、それが昨今のストレスに関する考え方の原型になっている。

ストレスの原因となる刺激をストレッサー、刺激を受けている状態をストレス状態と呼ぶ。そして、ストレス状態が続いて心身に症状が表れることを、ストレス反応と言う。ストレッサーは環境、身体的、社会的、心理的の4種類に分けられる。気温や騒音などの刺激が環境ストレッサーで、体調の悪化や体力の低下などの刺激が身体的ストレッサーだ。仕事や近所付き合いなどの社会生活の営みで生まれる刺激が社会的ストレッサー、自分の能力に対する不安感や緊張感などの刺激が心理的ストレッサーとなる。看護師は、この4種類のストレッサーの違いをしっかり理解しておこう。

さらに、嫌なことや悪いことだけでなく、喜ばしい出来事もストレスの原因となる。たとえば、出産後は産後うつというストレス反応があり、長期の入院患者の退院後には生活環境の変化でストレスを感じることもあるのだ。良いことであっても、刺激が大きければストレスになり得る。その事実を患者にしっかり伝える姿勢が、看護師に求められていると言えるだろう。